農業は1年に1作しかできないものが多く、圧倒的に経験・知識が不足してしまいます。
農業に従事し続けるには、勉強し常に新しい知見を学ばねばなりません。
勉強方法として、業界セミナー・先進地訪問・普及員による指導などありますが、私は本・業界誌・論文などを用いて勉強することが好きです。
その一環として『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』を読みましたので、書評・要約のように綺麗に整理できていませんが、感想・勉強になった内容をまとめてみます。
目次
『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』とは?
読みやすさ | |
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専門性 | |
役立ち度 |
- 著者: 武下 浩紹
- 出版社:秀和システム
- 発売日: 2020/03/14
- ページ数:224ページ
【目次】
- 第1章 ビジネス農家への進化
- 第2章 ビジネスイチゴ農家を始めるための“はじめの一歩” ~全国210万人の農家が生まれ変わるチャンス~
- 第3章 農家で成功するための新常識 ~SNS時代のパブリックコミュニケーション術~
- 第4章 オフシーズンの戦い方とは ~直販商品で経営が急成長!~
- 第5章 オンラインショップで全国にブランドを売る! ~売値も利益も自分で決めて365日24時間売り続ける~
- 第6章 イチゴ農家 起業2.0 ~武下流 必ずうまくいく成功哲学?
- 第7章 成功は技術。社会に貢献しながら自社も発展していく
『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』は、産直イチゴ農家「楽農ファームたけした」で高付加価値のイチゴビジネスを育てあげ、年商8000万円を超えるまでの道のりを示した1冊です。
イチゴ農家に向けて書かれていますが、それ以外の農家でもビジネスノウハウは学ぶ価値があります。
「食えない農家」から脱するため、農業をビジネスと捉え直した「イチゴ農家2.0」が語られます。
一般財団法人日本プロスピーカー協会認定・ベーシックプロスピーカーになっており、最近は講演家のようです。
『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』を読んで勉強になったこと

『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』では、以下の3つの観点から具体的に役立つ実践的なノウハウを紹介しています。
- 自社ブランド戦略
- オフシーズン戦略
- 生産者側と購買者をつなぐWeb戦略
本書で重要だと思った箇所を章ごとにまとめます。
第1章 ビジネス農家への進化
【第1章の小見出し】
- 10年後に食える農家、食えない農家
- ビジネス農家の時代がやってくる!
- 一般的なイチゴ農家の5倍! 年商1億は夢ではない!
- 失敗続きの試行錯誤から生まれた日本一美味しいイチゴ
- 赤字経営の原因とは?
- 年間1万セットお届けする産直農家になれた理由
- 2000円のあまおうが、8000円で売れるようになる
29歳でいちご農家になって、JA苺部会によって単価が決められており、収穫量を上げても労力・経費がかかるだけで10年後に「食えない農家」になることがわかりました。
食えない農家には4つの特徴があります。
- 大量生産品に真っ向から勝負を挑むこと
- 消費者のニーズを無視し、自分のやり方を変えないこと
- 生産者のこだわりばかり発信してしまうこと
- 新しい情報が入っても、できない言い訳を先にしてしまうこと
食える農家は「お客様の声を聞く機会を作れている」ということです。
10年後も食える農家になるためには、農業をビジネスとして捉えて経営していく必要があり、農作物の生産から加工・販売まで分野を事業拡大します。
単価設定・経営計画・休暇の取り方・働き方など、お金・時間の使い方を自分で設定可能です。
赤字経営に陥る原因を「生産者のこだわり、栽培手法のこだわり過ぎ」「数字の管理に弱い」「自分のマンパワーだけ」の3点を挙げています。
著者は以下の変遷の歴史を経て、2,000円/kgから8,000円/kgへ押し上げました。
- イチゴのことだけをPR
- 生産者のこだわりを一生懸命表現
- お客様の知りたい情報に応える(現場・農薬・配送)
- 期日指定やメッセージサービスを開始
- 100%返金保証を開始
- 行政や取引先の困ったことを解決する支援サービスを開始(ふるさと納税等)
第2章 ビジネスイチゴ農家を始めるための“はじめの一歩” ~全国210万人の農家が生まれ変わるチャンス~
【第2章の小見出し】
- まずは1年間、イチゴ農園を〝体験〟しよう
- 稲作農家がイチゴ農家になるには?
- 産直農家が自分のビジネスを輝かせるきっかけに
- “自力栽培エリア”をレンタルしてから、10アールのイチゴ農園にチャレンジしてみよう!
- 農業参入補助金&コンサル活用で、倍速加速する!
- これだけあれば始められる!イチゴ農家スタート設備一覧
イチゴ農家になるために、一年を通じた「イチゴ農家の実情」を知っておくことが大切です。
そのため、「イチゴ農園で実際に働く」「家庭菜園で栽培してみる」「市民農園をレンタルしてみる」などの方法が挙げられています。
1人で管理できる最大面積10aのイチゴ農家に必要な設備が記載されています。
- パイプハウス一式:500万円
- 暖房機:100万円
- 灌水設備:50万円
- 大型冷蔵庫(1坪):100万円
- ビニール:30万円
- その他備品:200万円
その他備品が何を指すのか不明確ですが、初期費用で1,000万円は必要だということが言いたいのではないでしょうか。
第3章 農家で成功するための新常識 ~SNS時代のパブリックコミュニケーション術~
【第3章の小見出し】
- SNSから熱意と努力を発信すると「共感」が生まれる
- なぜ懸垂している動画をFacebook にアップするのか?
- 発信すると「自尊心」に暗示がかかる
- 商品をPRするのではなく「つくっている人」をメディアからアピールせよ
- イチゴ栽培は「水」と「土の基礎体温」が9割
- まずは地元のフルーツ店を攻略しよう!
- 段ボール提供会社が営業開発の「鍵」を握っていた!?
- ありえなかった「500万円融資」を引き出す
- お客様からの「耳に痛い意見」を聞くことが、必ず成長につながる
- 交流会に出て「夢」を語るとイチゴが売れる!?
- 「1分間の自己紹介」がイチゴの売れ行きを左右する
- 講演会では商品アピールしない!失敗談を話せ
- ミニ講演会が商売の成長を加速させる!
- 知り合った人に役立つことから、イチゴが売れる!
SNS発信が大事だということが示されています。
「利益に関係ない理念で共感した人によって、利益につながる」ということを学び、イチゴを直接PRをするのではなく、社会貢献活動に参加することで間接的にアプローチします。
「この人と付き合いたい」「この人のためになにかしてあげたい」という信頼関係の構築が不可欠です。
SNS以外にも、取引先・PTA・異文化交流会・講演会などいろんなところでの人付き合いについて紹介されていました。
第4章 オフシーズンの戦い方とは ~直販商品で経営が急成長!~
【第4章の小見出し】
- オンシーズンは「生イチゴ」、オフシーズンは「加工品」を売れ!
- オフシーズンは「保存可能な新商品開発」のチャンス
- 売れないイチゴを煮詰めてみたら「あまおう85%の高濃度ジャム」ができた!
- 周りの人の協力で「1日600杯」シェイクが売れた
- 営業キラーフレーズは「ギフトでお困りでしたらご相談ください」
- 自社ブランドが会社を成長させる
- 新商品の試食希望者はSNSで集めよ
- 果実は食べ物ではなくコミュニケーションツールである
- 武下流クリスマス商戦の戦い方
イチゴのオンシーズンは半年しかないため、オフシーズンの立ち回りが肝心です。
著者は、フリーズドライのイチゴ「濃いするフローズン」などの加工品でオフシーズンを乗り切っています。
マツコの知らない世界でも取り上げられた「あまおう85%ジャム」の開発秘話も語られています。
第5章 オンラインショップで全国にブランドを売る! ~売値も利益も自分で決めて365日24時間売り続ける~
【第5章の小見出し】
- ショッピングモールで自社商品を直販する仕組みづくり!
- 「直販」ならば、値段も利益も自分で決められる
- 「お客様」は望みを叶えてくれる人や商品を探している
- お客様から発注理由を聞くだけで「新ニーズ」に気付ける
- 「想定外」のアイデアを他業種からもらえ!
- 魅力的な自社サイトづくりから、顧客リスト作成につなげよ!
- 応援したい!と思われる空気づくり
- 産直農家ならではの会員サービス―顧客へのお祝いや、季節イベントに合わせた提案と囲い込み
オンラインショップを活用する際は、モール型のオンラインショップよりも自社型のオンラインショップの方が良いと示されています。
直販なので、自分が思うサービス見合う価格設定を行えば、利益が出しやすくなるでしょう。
これについては私も同意見で、下記記事にてまとめていますのでご参照ください。
第6章 イチゴ農家 起業2.0 ~武下流 必ずうまくいく成功哲学?
【第6章の小見出し】
- いいものを作ったからといって、売れるとは限らない
- 価値に意味づけを!自分で値づけを!
- 「商品力」2割 、「人間力」8割でうまくいく
- うまくいかないときこそ見られている
- 365日、目標を言い続けるのです
- 「能力がない」なら「できる人」に聞けばいい
- 事業計画書が未来をつくる
- 農家だけでツルむな。「上場を目指す経営者」と語らえ
- 感動農業のすすめ
- 応援は「それでも」あきらめない人にやってくる
- もしイチゴ農家がナポレオン・ヒルの成功哲学を実践したら?
- 任せる、任されるの「信頼」がチームを強くする
消費者の判断基準は「誰が作ったのか」「誰に紹介されていたか」なのです。
そのために、表現力が必要で、商品力2割人間力8割だといっています。
365日目標を言い続けるや、上場を目指す経営者と語ったりなど、色々な方法が示されています。
第7章 成功は技術。社会に貢献しながら自社も発展していく
【第7章の小見出し】
- JAの存在価値
- お客様によって磨かれる
- 表現力を鍛えた学校教育との関わり
- 親を通じて世間様を知る「鏡の法則」
- 新卒採用への挑戦と失敗と成長
- 指導者の指導者
不平不満が何かを良くすることはありません。
「チャレンジには成功か失敗ではなく、成功か成長しかない。つまりやらない理由はないんだ」が、著者の好きなメッセージです。
『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』を読んで今後勉強すべきこと

『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』は、良くも悪くもセミナー講師になった人が書いた本だと感じました。
ビジネス書を読んで意識高めにしたいと思ったときに読むのが最適です。
個別具体の知識を高めたい場合は、他の本を読むのが良いでしょう。
マーケティングについては、『農業のマーケティング教科書』がおすすめです。
経営については、経営計画に重きを置かれた就農本である『就農は「経営計画」で9割決まる 農業に転職!』がおすすめです。
まとめ
『最強の自社ブランド農業経営ーいちごで年商8000万円ー』を書評・要約のようにまとまっていないかも知れませんが、感想・内容を紹介しました。
まだまだ勉強不足ですので、これらからもしっかり勉強していきます。
最新の農業情報を得るためには、本だと出版までのタイムラグがあるので、農業の専門雑誌を読むほうがおすすめです。
毎月購入すると結構コストがかかってしまうので、ネットで農業雑誌・家庭菜園誌が読み放の「楽天マガジン」がおすすめですので、利用してみてください。