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『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』勉強内容まとめ

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』勉強内容まとめ
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自然観察を楽しむには、生物の「同定作業」は避けては通れません。

同定作業とは、種名を確定し、名前を明らかにする作業です。

図鑑・専門書・論文との照らし合わせが必要で、「誤同定を出さない精度」が生き物愛好家のステイタスにもなっています。

この同定作業について書かれた『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』は、生き物観察をするならぜひ読んでほしいので紹介します。

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』とは?

読みやすさ
専門性
役立ち度
  • 著者: 須黒 達巳 (著)
  • 出版社:ベレ出版
  • 発売日:2021/12/14
  • ページ数:183ページ

【目次】

  • 第1章 教本を買っただけではバイオリンは弾けない
  • 第2章 目をつくるとは
  • 第3章 知識ゼロからのシダの同定
  • 第4章 みんなちがって、まちがえる
  • 第5章 図鑑づくりの舞台裏
  • 第6章 果て無き同定の荒野

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』は、図鑑を用いた同定のプロセスを学ぶことができる1冊です。

同定が苦手な方・同定を教えるのが苦手な方を読者として想定しているので、同定初心者にも分かりやすい内容になっています。

著者の須黒 達巳氏は、『世にも美しい瞳 ハエトリグモ』『ハエトリグモハンドブック』など図鑑を書く側でもあります。

図鑑を使う側・作る側の両面から、図鑑を使った「同定の哲学」が学び取れます。

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』を読んで勉強になったこと

読書

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』は、筆者の以下の問いをについて言語化した本です。

  • 私たちはどうやって同定ができるようになっていくんだろう
  • 同定をするとき、頭の中では何をしているのだろう

本書で重要だと思った箇所を章ごとにまとめます。

第1章 教本を買っただけではバイオリンは弾けない

【第1章の小見出し】

  • 知識と腕前
  • 生き物を見る腕前

図鑑を見ても名前がわからないのは、図鑑を買っても「知識」を得るだけで「腕前」は上がらないからです。

「ヒンディー語を辞書で検索する」「属が同じであるハエトリグモを探す」などを例に、特徴を正しく捉えて認識できる目ができていないことを示してくれます。

第2章 目をつくるとは

【第2章の小見出し】

  • どれがカ科か
  • どんなのがカ科か
  • もう目ができてきた
  • ホ~ホケキョと鳴くのは?
  • 何をして目ができたのか

「目ができる」とはどういう感覚で、どのような過程を経れば「目をつくる」ことができるのか、体験することができます。

「9匹の中から蚊を探す」「ウグイス・オオムシクイ・オオヨシキリ・シマセンニュウの識別」など目をレベルアップする実践練習を通して、以下の作業の重要性がわかります。

  • 言葉でインプットされた特徴を実物から見出す作業
  • 実物から見出した特徴を言葉で表す作業
  • 見比べる作業

「目ができている」状態は、「対象から多くの情報を得ることができ、サンプル同士の違いに気づくことができること」だと締めくくられています。

本書を買って、この実践練習によって感覚を掴んでいただきたいなと思いました。

第3章 知識ゼロからのシダの同定

【第3章の小見出し】

  • 花の名前は気にしても
  • 全体を眺めてみる
  • 同定形質を把握しておく
  • いざフィールドへ
  • 観察、観察、観察の先に、落ちる
  • 本当にそれ? 近似種の確認
  • 「後でわかる」のはよくあること
  • 別のフィールドに出ることで劇的にレベルアップ
  • 答えを知りたい
  • 見えてきたシダの世界

著者の専門外である「シダ植物」を題材に、初心者として同定に挑んでいく過程が示されています。

1年で観察を楽しめる同定レベルになっているのは驚愕です。

  1. 『シダハンドブック』『くらべてわかる シダ』、2冊の図鑑を入手
  2. 見分けるポイント「同定形質」を捉え、フィールドワークの準備
  3. フィールドワークでは同定形質を写真撮影
  4. 第2章のようにじっくり観察
  5. 写真をなぞって線画描写
  6. 比べる・表にする
  7. 同定結果に自信が無いとTwitterで質問
  8. 別のフィールドに出る

本書を読むことでこの工程を著者と一緒に読者も体験でき、図鑑を買ってもすぐに名前が分かるわけではないことがすごく理解できます。

第4章 みんなちがって、まちがえる

【第4章の小見出し】

  • めくるめく変異の世界
  • 一個体一個体、一枚一枚
  • 違いに気づく目と、共通点に気づく目

同定では、どこまでが個体間で見られる形質の違い「差異」で、どこからが「別種」なのかという問題に当たります。

どの個体にも当てはまる「ブレない特徴」を見抜ければ良いのだが、グループによってさまざまで場数を要します。

図鑑では変異・摩耗の全貌が網羅されていることは基本ありませんが、ブレない特徴を自分以外にも理解できるように表したものです。

第5章 図鑑づくりの舞台裏

【第5章の小見出し】

  • 謀りなき選択
  • 道しるべをどう置くか
  • 失われている感覚
  • 使い手にレベルアップを感じてもらいたい
  • この写真はどのくらい当てになるの?
  • そしてこの本へ

著者が図鑑を作った過程が記載されています。

目がずいぶん育ってしまい、一般の方の感覚との乖離に悩んだり、図鑑づくりの苦悩が垣間見えました。

「使いやすい図鑑とは当たるべき候補を絞りやすい図鑑」と著者は考えており、「見つけた場所から絞る」「対立候補も掲載する」「どのくらい差異があるか」など工夫がされているようで、著者の図鑑を手に取りたいと感じました。

第6章 果て無き同定の荒野

【第6章の小見出し】

  • 学校で何種の虫を採れるか
  • キモンハバチにトライ
  • 検索表は取り扱い注意
  • 標本数は大きな助けになる
  • ツヤホソバエにトライ
  • ノメイガにトライ
  • 『みんなで作る 日本産蛾類図鑑』
  • 全既知種のリスト、目録
  • 果て無き同定の荒野

著者は、自分が観察を楽しむレベルの同定レベルではなく、「リストとして世に報告し、記録に残すからには可能な限り誤同定を排除し、正確な種名」にこだわる必要があります。

プロの分類学者として、1種を同定するまでの道のりの長さが紹介されています。

キモンハバチでp125~p141、ツヤホソバエでp144~p157、ノメイガでp158~p163と、割いてあるページ数が膨大です。

それでも、「手元の標本は〇〇である可能性が高い、と主張するに足る根拠を得た」とし、入手し得る資料は可能な限り検討した結果、記述と矛盾がなくこの種に同定することにはそれなりの根拠があると、著者は説明します。

専門的な図鑑・論文・目録・モノグラフなどを頼りに1種ずつ同定し、6年で800種あまりを積み上げられており、感服するところです。

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』を読んで今後勉強すべきこと

勉強

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』で同定の奥深さを味わうことができました。

巻末に著者の「推し図鑑」が紹介されているので、それを手にとって同定にチャレンジしてみたいと思います。

くらべてわかる 昆虫

色で見分け 五感で楽しむ 野草図鑑

やさしい 日本の淡水プランクトン 図鑑ハンドブック

ネイチャーガイド 日本の水生昆虫

原色 日本甲虫図鑑

図説 日本のユスリカ

日本産有剣ハチ類図鑑

まとめ

『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか』を書評・要約のようにまとまっていないかも知れませんが、感想・内容を紹介しました。

同定作業に苦手意識があって避けていましたが、一度図鑑をもってフィールドワークをしてみます。