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ため池の基礎知識について【構造・機能】

ため池の基礎知識について 【構造・機能】
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ため池は、水の貯留・灌漑など農業に欠かせない役割を果たす貯水施設です。

防災・景観の形成など、様々な面で私たちの暮らしにも関わっています。

ため池の基礎知識について、その構造や機能について詳しく解説します。

ため池とは

ため池

ため池とは、農業用水を確保するために貯水し取水できるように、人工的に造成された池のことです。

ため池に水を貯えておき必要な時に耕作地へ送水できるため、季節ごとの降水量の変化や気象変動による影響を抑え、農作物を安定して栽培することができます。

日本は、地形が急で、山から海への距離が短く流れが速い河川が多くあります。

農業用水は河川から取水されることが多いが、流域の大きな河川に恵まれない地域や取水が安定しない地域でため池が利用されます。

例えば、水を使わない冬季に川の水を取り入れ貯えておけば、春先や初夏といった水が必要になる時季に耕作地へ供給することができます。

梅雨時の河川は平常時を上回る水量となることがあるが、この時の余分な水も貯えておけば盛夏時の渇水の危険性を減らすことができます。

また、冷涼な高地から流れ下る雪解け水を一時貯えて、田植え時の水田に温んだ水を供給することで冷害を防ぐ温水ため池もある。

ため池は全国に20万箇所存在します。最もため池が多い都道府県は兵庫県で4.8万箇所存在します。

ため池の種類

ため池は立地により「谷池」「皿池」に区分されます。

谷池

山間や丘陵地にある小さな谷や小川を堰き止めて造られたため池です。

堤体が高くて短く、周りは山に囲まれていることため、池の規模は比較的大きく、集水面積も広いため、貯水量が大きくなります。

集落より上流側に位置することが多く、決壊時の被害は大きくなります。

皿池

平地の窪地の周囲を築堤し造られたため池です。

堤体が低くて長く、集水面積が狭く、池全体の貯水量は比較的少なくなります。

用水の中継地の役割を担うこともあります。

ため池の構造

ため池の構造

引用:大阪府HP 

ため池の詳細構造

引用:ため池管理マニュアル(農水省農村振興局防災課)

ため池の構造は、以下の各部位から出来上がっています。

【ため池構造】

  • 堤体:基盤地盤上に盛土築造された本体
  • 洪水吐:余った水を流す
  • 取水施設:水の取水等に使用する
  • 底樋管:池干し時の排水等に使用する
  • 張ブロック:堤体内のり面を浸食から保護する
  • 腰石積:堤体に浸透した水をすみやかに排出する
  • 緊急放流ゲート:緊急時にため池の水位を下げる
  • 土砂吐ゲート:底樋管より土砂を排出させる

ため池の多面的機能

ため池

ため池は、農業用の機能を備えているだけではなく、農村地域には欠かせない多くの機能を備えています。

これを多面的機能といい、以下の機能があります。

【ため池の多面的機能】

  • 洪水調節機能
  • 土砂流出防止機能
  • 気候緩和機能
  • 地下水涵養機能
  • 生態系の保全機能
  • 保健休養機能

洪水調節機能

ため池に空き容量が存在する場合に、降雨時に雨水を一時的に貯留することで河川への流出を遅らせ、下流域の洪水を軽減し調節する機能があります。

直接河川を流れるよりも長い時間をかけて下流の河川に戻され、川の流れを安定させる役割を果たしています。

土砂流出防止機能

土砂が川へ流出し川底にたまると、洪水を引き起こす原因にもなります。その土砂の流入を抑える効果がため池にあります。

豪雨等により山間部の土砂が崩壊した際に、ため池が土砂や流木を留めることにより、下流域の被害を軽減しています。

通常時もため池内を土砂の混ざった水が通過すると、土砂の一部は沈み、ため池内に蓄えられます。そのため、ため池下流域の川などへの土砂の流出を減らします。

気候緩和機能

ため池は、水面からの蒸発散により夏季は気温を下げ、冬季は気温を上げるはたらきがあります。

地下水涵養機能

貯留した雨水等の多くは、地下にゆっくりと浸透して地下水となり、良質な水として下流地域の生活用水等に活用されます。

生態系の保全機能

ため池は、農業生産活動のサイクルに沿った貯留と流出により水位の変動が短期間で人為的に行われる。同じ止水域である湖沼とは大きく異なる特徴です。

人為的攪乱を受けるため、沿岸帯に自生する植生の遷移が妨げられるなど生物環境の多様性にも影響を与えています。

また、周囲の水田や農業用排水路、雑木林、畦畔と連なって農村環境を形成しており、農村地域に生息する多くの生物は生活史に応じ様々な環境を利用しながら水生昆虫・魚類・両生類・鳥類等多様な生物の生息・生育空間となっています。

保健休養機能

農地と農業用用排水路を含む集落の外周に位置し、これらと一体となった空間を形成しています。

豊かな生態系や伝統的な田園風景に接することの出来る空間として利用されてます。

広いため池の場合、ウインドサーフィンやボート、カヌー、水上オートバイなどを使った娯楽場所として使われているところもあります。

また灌漑の役目を終えても池として残され、噴水や遊具の整備を行い親水の公園として公開されているところもあります。

まとめ

ため池

ため池の基礎知識(構造・機能)についてまとめました。

「のうぎょうとぼく」の中では、農業土木に関する豊富な記事を書いています。

農業土木について勉強できる本については下記にてまとめていますので、ぜひご覧ください。