2023年現在、岐阜県は以下の13個の構造物が選奨土木遺産に認定されています。
- 美濃橋
- 白川橋
- 六見橋
- 木曽川河跡湖(トンボ池)の聖牛
- 太田橋
- 長良大橋
- 嫌谷砂防堰堤群
- 上麻生発電所取水堰堤
- 忠節橋
- 揖斐大橋
- 五六閘門
- 山川橋
- 大井ダムならびに大井発電所
本記事では、この中から五六閘門について解説します。
土木遺産とは

土木遺産(土木学会選奨土木遺産)とは、日本の歴史的土木構造物の保存に資することを目的として、土木学会により「土木遺産」に認定・顕彰された構造物群のことです。
認定制度は、平成12年に設立され、推薦・一般公募により毎年20件程度が選出されています。
土木遺産は、以下の4つのことが促されることが期待されています。
- 社会へのアピール:土木遺産の文化的価値の評価、社会への理解等
- 土木技術者へのアピール:先輩技術者の仕事への敬意、将来の文化財創出への認識と責任の自覚等の喚起
- まちづくりへの活用:土木遺産は、地域の自然や歴史・文化を中心とした地域資産の核となるものであるとの認識の喚起
- 失われるおそれのある土木遺産の救済:貴重な土木遺産の保護
毎年次々と土木遺産が増えていきますので、土木学会のHPを閲覧し、最新の土木遺産の情報をご確認ください。(土木学会選奨土木遺産HP)
「五六閘門(牛牧閘門)」について
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五六閘門(ごろくこうもん)は長良川の支流である五六川の逆水留樋門で、牛牧輪中における下流からの逆水を防ぐことから牛牧閘門(うしきこうもん)とも呼ばれています。
瑞穂市は東西を長良川・揖斐川に挟まれ、市内には犀川などの一級河川が多数流れる水に恵まれた土地です。
長良川からの逆流による水害から地域を守る役割を果たしています。
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牛牧輪中は海抜5~6mという低湿地であるので、出水のたびに起こる長良川から五六川への逆流による浸水・滞留水に悩まされていました。
1749(寛延2)年、幕府直轄地美濃郡代配下の本田代官となった「川崎平右衛門定孝」が、閘門樋設置の治水事業を開始し、1757(宝暦7)年に木造の水門「牛牧輪中逆水留樋門」が建造されました。
その後150年の間に4・5回の建て替えられたのち、1907(明治40)年に「人造石工法」によって建造された水門が現存しています。
コンクリート工法が普及する以前の水門で、左官の伝統技術である「たたき」の技術を応用した構築物です(水門に限れば岐阜県で唯一)。
岐阜県内に現存するものは数少なく、学術的に極めて貴重であることから、2020(令和2)年度の選奨土木遺産に選出されました。
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五六閘門(牛牧閘門)の諸元 | |
竣工年 | 明治40年3月改築 |
大きさ | 長さ12m、高さ8.5m |
閘門の構造 | 二連アーチ式の樋門 観音開き鉄扉2基 |
五六閘門(牛牧閘門)の諸元は簡単に上記の表にまとめました。
長良川が増水すると水位差によって自動開閉し、逆流を防止します。
施工後100年以上が経過しているため、笠石の損失・断面欠損・ひび割れが確認されています(出典:文化財保全の観点に配慮した五六閘門における補修設計)。
人造石工法について
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人造石工法とは、消石灰・真砂を水で練ってたたき固め、土間・床下・流しなどの湿気の防止・水密を図る在来の左官技術である「たたき(敲き・叩き・三和土)」を土木工法として利用できるようにしたものです。
たたき練り土と自然石を組合せ、石と石は互いに接触させない・練り土の中に石が浮いている状態にすることで、水密性のある堅固な張石層(保護層)が形成されます。
明治9(1876)年に服部長七が人造石工法を開発・施行できたのは、出身地「愛知県碧南」が大きく関係しています。
愛知県矢作川流域を中心として三河湾沿岸に真砂が豊富に堆積しており、それを使った「三州たたき」は非常に有名で、左官であった服部長七には馴染みの工法でした。
そのため、人造石工法で建造された多くの遺構は、愛知県を中心に残っています。
材料費・石材の加工費を抑えられ、強固で自由度のある構造物を建造できるため、国産セメントの品質安定と生産量の拡大・価格低下によるコンクリート工法が普及するまでの過渡期において全国の土木工事で採用されました。
川崎平右衛門を祀る「川崎神社」


1757(宝暦7)年に木造の水門が設置されて以降、川沿いの村は現在に至るまで水害に守られ続けています。
川崎平右衛門定孝の尽力によるところが非常に大きいので、別府村花塚と野田新田の地には川崎平右衛門定孝を祀る「川崎神社」が建てられてました。
現在も偉徳を偲んで祭事に奉仕しています。
五六閘門のすぐ横(五六川左岸側)に川崎神社にありますので、ぜひ参ってみてください。
今後の五六閘門(牛牧閘門)の役割について
原位置より下流で代替施設として新設樋門を設置することで、河道狭窄部を解消する計画があり、治水面において役目を終えます(出典:文化財保全の観点に配慮した五六閘門における補修設計)。
どれだけ河道狭窄しているかは、上図の木曽川水系五六川洪水浸水想定区域図を御覧ください。
引用:国土交通省「流域治水対策の代表事例について」p8
引用:犀川遊水地事業
そのため、国土交通省が主体である「五六川牛牧地区内水対策事業」が実施され、牛牧排水機場・牛牧樋門・牛牧排水樋門の設置、五六川・起証田川の切替が行われます。
樋門として役割が無くなり河道のバイパス化も実施されれば、現管理者の県より市に移管され、周辺の平場や本施設を活用した公園的整備が市により進められ、国の登録有形文化財に登録予定です。
犀川遊⽔地の公園的整備では、歴史・文化拠点の1つとして今後も活用されていきます。
公園的整備の詳細について、犀川遊⽔地グリーンインフラ基本構想でご確認ください。
「五六閘門(牛牧閘門)」へのアクセス
- 所在地:〒501-0234 岐阜県瑞穂市牛牧
- 問い合わせ先・所有者:岐阜県岐阜土木事務所
- 自家用車所要時間:名神高速道路「岐阜羽島IC」から車で約15分
- 公共機関所要時間:瑞穂市みずほバス「清流みどりの丘公園」から徒歩約10分
・タクシー:タクシーアプリ「GO」
・レンタカー:skyticketレンタカー
駐車場
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駐車場はないので、堤防に路駐するしかありません。
左岸側は舗装されており、右岸側は未舗装です。
周辺は工事車両が非常に多く行き交いしますので、気をつけて訪問してください。
まとめ
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岐阜県の土木遺産「五六閘門(牛牧閘門)」についてまとめました。
樋門としての現役引退が迫っているので、今のうちにぜひ訪問してほしいです。
ただ、「転落防止柵がない注意看板」があるように、観光地として安全確保がされているところではないので、見学の際には安全に配慮してください。