近年、日本の地方では深刻化する獣害対策に頭を悩ませています。
農作物や生活環境への被害を防ぐため、鹿やイノシシなどの野生動物の駆除が行われていますが、その多くが活用されずに廃棄されているのが現状です。
農林水産省「捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況(令和5年度)」では、捕獲されたシカ・イノシシのうちジビエとして食肉加工・流通された割合は約1割と示されており、ほとんど利用されていません。
しかし、この状況を変えようとする動きが広がり、駆除された野生動物の皮を加工した「ジビエレザー」という革製品が注目を集めています。
「頂いた命に感謝し、無駄にせず使いたい」「もっと価値のあるものに生まれ変わらせたい」という想いが込められたこの商品は、獣害対策と資源の有効活用を両立する新たな取り組みとして期待されています。
この取り組みを支援する手段として、ふるさと納税を通じて、獣害に悩む地方自治体を応援しながら、ジビエレザー製品を返礼品として受け取ること可能です。
本記事では、害獣から生まれた至高の逸品であるジビエレザーの魅力と、ふるさと納税を通じた獣害対策支援の可能性について探っていきます。
目次
鹿革(シカ革)を活用したジビエレザー返礼品
鹿革(シカ革)は軽く丈夫で通気性に優れた革素材で、“レザーのカシミア”と評されるように柔らかくしなやかな質感に優れています。
日本では刀剣の鞘・足袋などに使われた形跡から、1300年以上前から使用されていると推察される伝統的な素材です。
鹿革は性別によって品質特性が異なり、雄鹿に比べて牝鹿の方が傷が少ない傾向にあるため、ディアスキン(牝鹿革)はバックスキン(雄鹿革)と比べてより滑らかな肌さわりになります。
鹿革は油分が抜けにくい特徴があり、これは素材の丈夫さとお手入れの容易さにつながりますが、同時に銀面(革の表面層)が剥がれやすいという特徴もあります。
そのため、製品選びの際には、この銀面剥離を味わいとして受け入れられるかどうかが重要な判断基準です。
【鹿革(シカ革)を活用したジビエレザー返礼品】
- 天然鹿毛皮を使用した野球用グローブ:宮城県蔵王町
- 甲州印伝「URUSHINASHIKA」カードケース:山梨県富士河口湖町
- ジビエレザー鹿革マルチペンケース:長野県上田市
- 東広島産天然鹿革 5連キーケース:広島県東広島市
- シカ革 片マチ札入れ(財布):宮崎県えびの市
天然鹿毛皮を使用した野球用グローブ:宮城県蔵王町
宮城県蔵王町のふるさと納税には、「天然鹿毛皮を使用した野球用グローブ」があります。
同町在住の猟師「EL MATAGI」と野球用品の製造開発を行う「DEADSTOCK」がコラボレーションして制作した天然鹿毛皮を使用した野球用グラブで、内野手用グラブ(約27.8cm)と投手グラブ(約29.5cm)から選択可能です。
この製品は、有害駆除でいただいた命を最大限に活かすという理念のもと、これまで活用されずにほとんどが廃棄されていたニホンジカの毛皮を有効活用するために開発されました。
また、収益の一部は環境保護活動への寄付に充てられ、社会貢献にも寄与する商品となっています。
※この製品で使用されている毛皮は原皮ではなくなめした革の一種であるため、今回ジビエレザーの中で取り上げさせていただきました。
【ふるさと納税掲載サイト】
- 提供事業者:蔵王ジビエレザー&ファー
- HP:https://zao-glf.myshopify.com/
- 住所:〒989-0916 宮城県蔵王町遠刈田温泉字遠刈田北山35-263
甲州印伝「URUSHINASHIKA」カードケース:山梨県富士河口湖町
山梨県富士河口湖町のふるさと納税には、甲州印伝「URUSHINASHIKA」カードケース(約7cm×10.5cm)があります。
甲州印伝(甲州印傳)は、山梨県に400年以上前から伝わる伝統工芸品で、鹿革の上に漆で紋様を付ける独特な加工技法が特徴です。
かつては国内産の鹿革が使用されていましたが、現在は中国から輸入されたキョンの皮が主流となっています。
この状況を改善するため、有害駆除で廃棄される国内の鹿皮を有効利用し、国産鹿革の印伝製造を目指して、山梨県・富士河口湖町・同町内のシカ処理場の協力のもと「URUSHINASHIKA(ウルシナシカ)」プロジェクトが立ち上げられました。
「URUSHINASHIKA」(ウルシナシカ)は、「漆」「山梨」「鹿」を意味する言葉で山梨県が商標登録したブランドです(参照:特許情報プラットフォーム登録61384451)。
URUSHINASHIKAのブランドは、一流の職人たちの伝統的な技術・革新的なデザインの融合から産み出されています。
- 皮鞣し(株式会社A.I.C:代表取締役倉田幸男):環境負荷が極めて少ない「ポルティラ鞣し」技術と独自の方法を進化させたプロ
- 漆付け(有限会社印傳の山本:代表取締役社長山本裕輔):国家資格である伝統工芸士認定試験に合格した「甲州印伝 伝統工芸士」
- 革の縫製(株式会社シノダ:篠田英志):日本鞄ハンドバッグ協会主催「第3回技術認定試験」1級鞄部門で合格した鞄作りのプロ
- 狩猟(山梨県富士河口湖町ジビエ食肉加工施設:滝口雅博):正確な狩猟スキル・深い自然への敬意・捕獲したニホンジカの食肉処理技術を持つプロ
製品は真っ白に鞣された鹿革の落ち着いた雰囲気と洗練されたデザインが特徴で、カードケースの他にも、長財布・スマートフォンケース・ペンケースなど多様な製品が展開されています。
【ふるさと納税掲載サイト】
- 提供事業者:株式会社URUSHINASHIKA GLOBAL
- HP:https://urushinashika.com/
- 住所:〒400-0862 山梨県甲府市朝気3丁目8−20
ジビエレザー鹿革マルチペンケース:長野県上田市
長野県上田市のふるさと納税には、ジビエレザー鹿革マルチペンケースがあります。
このペンケースは、文具だけでなく、メイク道具のブラシやアイライナーといった細長グッズも収納できる実用的な製品です。
【ジビエレザー鹿革マルチペンケースの諸元】
- 大きさ
・縦約20cm×横約22cm(広げた場合)
・縦約20cm ×横約5cm(閉じた場合) - ポケットの数:5つ
- 重量:約70g
- 色:ブラウン・カーキ・ボルドー
製造元のCPF上田は、革製品の製作・パソコン業務・農業など多種多様な業務を利用者に提供している就労継続支援A型事業所です。
害獣として駆除された鹿の革を実用的なペンケースに生まれ変わらせることで、『害から美へ新たに命を吹き込む』という挑戦を行っています。
使用される鹿革は、長野県小諸市の加工施設で肉と革を無駄なく分別し、飯田市の株式会社メルセンにて鹿革本来の良さを引き出すため、丁寧な工程で時間をかけて製作されています。
普通の鹿革とは違い、駆除された際の「キズ」やひきずったために生じた「痕・穴」がある部分も敢えて使用し、命の尊さを伝えるメッセージとして積極的に活用しているのは特徴的です。
また、鹿革特有の自然なシボ(表面にちりめん状に細かく寄った不規則なシワ模様)を活かし、素材本来の風合いを損なわないよう仕上げられています。
- 提供事業者:self-A・CPF上田(株式会社CPF)
- HP:https://www.self-a.net/staff/list/nagano03/
- 住所:〒386-0025 長野県上田市天神1-8-1 上田駅前ビルパレオ1F-2
- 連絡先:TEL 0268-71-5559
東広島産天然鹿革 5連キーケース:広島県東広島市
広島県東広島市のふるさと納税には、【広島東洋カープ×広島ジビエレザー】東広島産天然鹿革 5連キーケースがあります。
東広島市では年間5000頭前後の野生動物を狩猟され、ジビエ肉は流通が進んできておりますが皮はほとんどが利用されていませんでした。
革工房ベルズでは東広島ジビエセンター(現在は独立したVARIED)と共同でその皮を有効利用しようと試行錯誤しジビエの革「広島ジビエレザー」を作りました。
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その広島ジビエレザーと広島東洋カープがコラボしたジビエ鹿革キーケースです(広島東洋カープライセンス商品)。
サイズは折りたたみ時で縦約12cm×横7cm×厚み3.5cmで、大容量5連キーケースでスマートキーも収納できます。
野生の鹿革なので1枚1枚違う状態になり、一つ一つ丁寧な手作業により作りだされる1点物です。
キーケース以外にも財布・名刺入れ・ユニフォーム型スマホクリーナー・パスケース・ユニフォーム型パスケース・ファスナーポーチなど豊富なラインナップがあります。
【ふるさと納税掲載サイト】
- 提供事業者:革工房BELL’S(株式会社エイジュクリエイト)
- HP:https://bells.jp/
- 住所:〒739-0151 広島県東広島市八本松町原7451
- 連絡先:TEL 090-8995-0377
シカ革 片マチ札入れ(財布):宮崎県えびの市
宮崎県えびの市のふるさと納税には、シカ革 片マチ札入れ(財布)があります。
「えびの市鹿協会」は、中山間地域の農林作物を守るために駆除された鹿を有効利用するため、革製品の制作に取り組んでいます。
えびの市加久藤地区の猟師4名が罠で捕獲した鹿の皮を、関東・関西のなめし工場で加工した革を使用して製作されており、サイズは9.5cm×11.5cm×1.6cmです。
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えびの市では、地域の豊かな自然・独自の資源・伝統的な加工技術などを活かし、”本物”のえびの市の食材やものにこだわった魅力ある産品を「えびのブランド」として認証しています。
えびの市鹿協会は、このえびのブランドの認証を平成30年に取得しました。
シカ革製品を地域のブランド品として更に定着させるべく、積極的な取り組みを進めています。
- 提供事業者:えびの市鹿協会
- 住所:〒889-4221 宮崎県えびの市栗下117−3 コーポさつま
- 連絡先:TEL 0984-35-0091
猪革(イノシシ革)を活用したジビエレザー返礼品
猪革(イノシシ革)は、牛革と比較して2/3程度の重さで5~10倍長持ちし、擦れやひっかきに強い高い摩耗性・耐久性を持っています。
正倉院に保管されている漆皮箱には、牛皮とともに猪皮が使用されていたことが確認されており、古代から高級素材として認識されていました。
ヨーロッパで用いられる「チンギャーレ」「ペッカリー」などの革と比べ、革繊維がとても密になっているので水分が入り込む穴が少なく、シボ(皺/毛穴)が水分を揮発させるので、水染みができにくい水に強い特性も持っています。
【猪革(イノシシ革)を活用したジビエレザー返礼品】
- いのしし工房oraino 印鑑ケース:宮城県丸森町
- ジビエレザーL字ハーフ財布:千葉県南房総市
- 雲南猪革 パスケース:島根県雲南市
いのしし工房oraino 印鑑ケース:宮城県丸森町
宮城県丸森町のふるさと納税には、いのしし工房oraino 印鑑ケースがあります。
サイズは横10.5cm×縦5cm×厚さ2cmで、小さめの印鑑から大きめの印鑑まで(10.5・12.0・13.5・15.0・16.5・18.0mm)幅広く使用いただくことが可能です。
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いのしし工房orainoの製品は、宮城県丸森町筆甫地区で害獣として駆除されたイノシシの皮を、ベジタブルタンニンで鞣し加工した革を使用しています。
野生のイノシシを素材としているため、傷やシミなどの自然な痕跡が残されており、また捕獲された個体のオスメスの違いや季節によっても革の風合いが異なるのが、野生動物ならではの個性を活かした製品です。
印鑑ケースは、表側にこのイノシシ革を使用し、内側には実用性を考慮して合皮を採用、職人による丁寧な手作業で一点一点制作されています。
ジビエレザーL字ハーフ財布:千葉県南房総市
千葉県南房総市のふるさと納税には、ジビエレザーL字ハーフ財布があります。
この製品は、千葉県館山で有害鳥獣として駆除されたキョンとイノシシの皮を活用して作られており、館山ジビエプロジェクトに参画している製品です。
獣害対策や農業の現場に還元するサーキュラーエコノミーの仕組みづくりを目指しています。
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表革には手触りの良いキョンレザーを、内側のコインケース部分には耐久性に優れたイノシシレザーを使用したコンパクトな財布で、カラーリングは「エコトーンネイビー」「エコトーングレー」「藍染」から選択可能です。
天然皮革本来の質感を大切にするため、革の表面には過度な仕上げ塗装を施していません。
この製品は、地域の獣害対策に貢献しながら、野性味あふれるワイルドな素材感や風合いを楽しめる、サスティナブルな取り組みの一つとして注目されています。
【ふるさと納税掲載サイト】
- 提供事業者:合同会社DIEM
- 住所:〒299-2505 千葉県南房総市宮下331
- 工房:Atelier Lab.伝右衛門製作所
- 住所:〒294-0045 千葉県館山市北条1625-25 1階『YANE TATEYAMA』内
- HP:https://yane-tateyama.jp/
雲南猪革 パスケース:島根県雲南市
島根県雲南市のふるさと納税には、雲南猪革 パスケース -UNNAN SHISHI LEATHER-があります。
このパスケースは、横7cm×縦9.5cmのサイズで、イノシシの革を使用して作られています。
イノシシ革は非常に丈夫で品質が高いことが特徴ですが、同野生で生きた証である傷や個体差が顕著に現れます。
革工房 蕾では、これらの個体差を天然素材ならではの魅力として捉え、素材を無駄なく活用する方針です。
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「UNNAN SHISHI LEATHER」ブランドは、害獣として駆除されるイノシシの皮を有効利用することを目的としています。
このような取り組みは、単なる製品作りに留まりません。
イノシシ革製品の流通が増えることで、ものづくりの職人・解体職人・猟師など様々な職種に経済効果をもたらし、地域の雇用創出や人口減少問題の緩和にもつながる可能性があります。
パスケース以外にも、キーホルダー・ペン入れが返礼品で用意されています。
【ふるさと納税掲載サイト】
- 提供事業者:革工房蕾
- HP:https://kawakoubou-tsubomi.com/
- 住所:〒699-1322 島根県雲南市木次町寺領2954‐2 食の杜センタ
- 連絡先:TEL 070-9006-8835
まとめ
【鹿革(シカ革)を活用したジビエレザー返礼品】
- 天然鹿毛皮を使用した野球用グローブ:宮城県蔵王町
- 甲州印伝「URUSHINASHIKA」カードケース:山梨県富士河口湖町
- ジビエレザー鹿革マルチペンケース:長野県上田市
- 東広島産天然鹿革 5連キーケース:広島県東広島市
- シカ革 片マチ札入れ(財布):宮崎県えびの市
【猪革(イノシシ革)を活用したジビエレザー返礼品】
- いのしし工房oraino 印鑑ケース:宮城県丸森町
- ジビエレザーL字ハーフ財布:千葉県南房総市
- 雲南猪革 パスケース:島根県雲南市
ジビエレザーの返礼品を紹介させていただきました。
獣害対策として駆除される野生鳥獣の90%以上が活用されずに廃棄されている現状に対して、ジビエレザーという新たな価値創造の取り組みに興味を持って頂ければ幸いです。
各地域で展開されているジビエレザーは、地域特有の技術や文化と結びつき、独自の価値を持つ製品として今後もさらなる発展が期待されます。
私たち1人1人がふるさと納税を通じてこれらの取り組みに参加することで、地域の課題解決と新しい価値創造の一翼を担うことができるのです。
ぜひジビエレザーを返礼品に選んでみてください。