農業は1年に1作しかできないものが多く、圧倒的に経験・知識が不足してしまいます。
農業に従事し続けるには、勉強し常に新しい知見を学ばねばなりません。
勉強方法として、業界セミナー・先進地訪問・普及員による指導などありますが、私は本・業界誌・論文などを用いて勉強することが好きです。
その一環として『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』を読みましたので、書評・要約のように綺麗に整理できていませんが、感想・勉強になった内容をまとめてみます。
目次
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』とは?
読みやすさ | |
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専門性 | |
役立ち度 |
- 著者:森岡 毅 (著)
- 出版社:KADOKAWA/角川書店
- 発売日:2016/4/23
- ページ数:261ページ
【目次】
- プロローグ USJがTDLを超えた日
- 第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり
- 第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない
- 第3章 マーケティングの本質とは何か?
- 第4章 「戦略」を学ぼう
- 第5章 マーケティング・フレームワークを学ぼう
- 第6章 マーケティングが日本を救う!
- 第7章 私はどうやってマーケターになったのか?
- 第8章 マーケターに向いている人、いない人
- 第9章 キャリアはどうやって作るのか?
- エピローグ 未来のマーケターの皆さんへ
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』は、ディズニーランドを超えて集客数日本一のテーマパークになることができたUSJの秘密を学ぶことができます。
著者の森岡毅氏は、USJをV字回復させた立役者で、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)・執行役員・マーケティング本部長をされています。
USJでの実施例などが記載されており、マーケティングを知らない人に向けて書かれたマーケティングの根本を理解するのにわかりやすい1冊です。
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』を読んで勉強になったこと
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』での目的は、実践経験者の視点で次の2つのニーズにできるだけわかりやすく答えることです。
- 個人も会社もビジネスで成功するためのカギで会えう「マーケティング思考」を伝えること
- 著者が体験してきた「キャリア・アップの秘訣」を伝えること
本書で重要だと思った箇所を、章ごとにまとめました。
第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり
USJは2004年に経営破綻しており、著者が入社した2010年での喫緊の課題は、集客数・トップライン(売上)をどう成長させるかでした。
会社がマーケティングに期待するのは主に「トップライン(売上)」を伸ばすことです。
多くの幹部社員から集客低迷の原因をヒアリングをした結果、「開業翌年に起こした不祥事」「ブランドの軸がブレたせい」だという仮説が出ましたが、どれもビジネスの結果を左右する衝くべき焦点「ビジネス・ドライバー」ではありませんでした。
著者がUSJのトップラインを伸ばすビジネスドライバーは以下の3つだったと説明されています。
- ターゲット客層の幅:客層の幅が狭すぎるので、映画の専門店から世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップへ
- TVCMの質:ブランドイメージを強固にする仕掛け(プロモーション・キャンペーン)が必要
- チケット価格の値上げ:日本のテーマパークは世界標準の約半分で安売りされている
これらを変えたことの根っこにあることは、消費者視点(Consumer Driven)という価値観と仕組みにUSJを変えたことです。
消費者視点の会社(Consumer Driven Company)になれば、自ブランドの価値をあげて業績を好転させることができます。
しかし、会社の利害と個人・部門の利害は必ずしも一致しないので、消費者視点で会社を統一させて機能させるは簡単ではありません。
そのため、マーケターは消費者理解の専門家として、消費者価値を最大化させる最善策を部門や個人の利害を超越して主張することが重要です。
第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない
日本の多くの企業が不振に陥っている原因は、技術志向に偏りすぎ、マーケティングを軽視してきたことにある。
日本企業の多くがマーケティングのキャリアを伸ばすような構造ではなく、きちんとしてマーケティング部がありません。
さらに、TVCMの唯一の目標は自社のビジネスを伸ばすことだが、日本企業のTVCMはその役目を果たせていないものが多く、費用対効果測定もできないことが多いです。
日本での発達が遅れた主な理由は、日本の技術志向・規制による競争阻害・終身雇用制などの事情によると考えられます。
第3章 マーケティングの本質とは何か?
マーケティングは「売れるような仕組み」を作ることを指します。
売れる仕組みは、消費者とブランドの接点をコントロールして作られ、
- 消費者の頭の中を制する
- 店頭を制する
- 商品の使用体験を制する
の3つになります。
「消費者の頭の中を制する」には、自ブランドの認知率を高め、消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージ(ブランド・エクイティー)を意図的に構築します。
「店頭を制する」には、消費者が自ブランドを購入する可能性を最大化させるように「配荷率」「価格」「山積率」などの展開に注意します。
「商品の使用体験を制する」には、消費者価値をあげる商品開発をマーケティングがリードします。
これらを数式に当てはめると以下のようになります。
売上金額=消費者の数×認知率×購入率×平均価格
第4章 「戦略」を学ぼう
著者の森岡毅氏が「マーケターになるために最も大切なスキルは何かと」聞かれれば、「戦略的思考能力を身につけること」と答えます。
戦略的思考は、目的→目標→戦略→戦術と下方展開して、経営資源(カネ・ヒト・モノ・情報・時間・知的財産)について考えていきます。
- 目的:命題・最上位概念
- 目標:資源集中投下の具体的な的
- 戦略:資源配分の選択
- 戦術:実現するための具体的なプラン
企業にとって「どう戦うか(戦術)」の前に、「どこで戦うか(戦略)」を正しく見極めることが何よりも重要で、良い戦略かどうかは以下の4Sチェックが大事です。
- Selective:やることとやらないことを明確に区別できているか
- Sufficient:経営資源がその戦局での勝利に十分であるか
- Sustainable:短期ではなく中長期で維持継続できるか
- Synchronized:自社の特徴(強み・弱み・経営資源)を有利に活用できているか
第5章 マーケティング・フレームワークを学ぼう
マーケティング・フレームワークとは、マーケティングの課題に取り組むにあたってその型に沿って考えていくと「整合性のある戦略と戦術」を生み出しやすくなる便利な道具です。
- 目的:OBJECTIVE(達成すべき目的は何か?)
- 目標:WHO(誰に売るのか?)
- 戦略:WHAT(何を売るのか?)
- 戦術:HOW(どうやって売るのか?)
を順番に考えていきます。
まず、戦況分析を行い、市場構造をよく理解してそれを味方につけるために、5C分析を実施します。
- Company(自社の理解)
- Consumer:消費者の理解
- Customer:中間顧客の理解
- Competitor:競合他社の理解
- Community:ビジネスをとりまく地域社会の理解
目的の設定(OBJECTIVE)
適切な目的設定について以下の3つが重要になります。
- 実現可能性:「高過ぎず低過ぎない」という相反する条件を満たす
- シンプルさ:人が理解できる、覚えられる、すぐに思い出せることが大事
- 魅力的かどうか:魅力的な目標設定により人的資源を激増させる
目標:WHO(誰に売るのか?)
限られたリソースを消費者全員に投下すると1人あたりのリソースが薄くなってしまうため、マーケティングのターゲットとして誰を狙うのか設定が必要です。
戦略的ターゲットを選び、その次にコアターゲットを選びます。
戦略的ターゲットは、ブランドがマーケティング予算を必ず投下する最も大きな括りで、目的達成に照らして小さ過ぎないように設定します。
コアターゲットは、戦略的ターゲットの中でさらにマーケティング予算を集中投資するターゲット消費者の括りで、消費者の購入確率・購買力に大きな偏りがある時にブランド購入する必然性が高い消費者グループを設定します。
コアターゲットの見つけ方は次の6つのパターンのいずれかに当てはまります。
- ベネトレーション:カテゴリーの中で自ブランドの世帯浸透率を増やせるグループはいないか?
- ロイヤルティ:既存使用者の中で「SOR(share of requirements)を伸ばせるグループはいないか?
- コンサンプション:既存の使用者の中で1回あたりの「消費量」を増やせるグループはいないか?
- システム:既存の使用者の中で使用商品の種類(SKU数)を増やせるグループはいないか?
- バーチェス・サイクル:既存の使用者の中で購入頻度を上げる(購入サイクルを短くする)理由を作れるグループはいないか?
- ブランド・スイッチ:競合ブランド使用者の中にブランド変更の可能性の高いグループはないのか?
戦略:WHAT(何を売るのか?)
自ブランドの消費者価値を選んで明確に規定します。
これは、ブランド・エクイティーの中で根源的な便益の構成部分のことです。
消費者の頭の中で、購入の強い理由となるブランド・エクイティーに最も近い場所にポジショニングしているブランドが有利になります。
しかし、ポジショニングは相対的なので、自分が動かなくても相手が動くことでブランド・エクイティーが動かされてしまうので、他社の動きにも注意が必要です。
戦術:HOW(どうやって売るのか?)
HOWは、WHATをWHOに届けるための仕組みで、マーケティング・ミックス(4P)です。
- product(製品):WHATをどのような製品システムで提供するか決める
- price(価格):自ブランドが目指すポジションに適した価格を決める
- place(流通):効率的かつ効果的な顧客への販売アクセス方法を決める
- production(販促):効果的かつ効果的な顧客への情報伝達方法を決める
第6章 マーケティングが日本を救う!
日本は、お互いを信頼して思いやり、道徳律が最も高い「高信頼社会」です。
これを支える重要な柱が2つあります。
- 「お互いに分かち合う」価値観
- 日本が豊かであること
また、情緒的で精神主義を重視する日本社会の特徴は、日本の戦術面の強さにつながっています。
情緒的に戦えることで戦術は強いのですが、情緒的な意思決定をしがちです。
そのため、日本の組織の多くは戦略を間違えるというよりもむしろ「戦略がない」ことが多いのです。
戦略段階では極力「情緒」を排除して、合理的に準備してから精神的に戦うようにしなくてはいけません。
第7章 私はどうやってマーケターになったのか?
著者の森岡毅氏は、P&Gでの経験から「実践経験の積み重ねでしかマーケターは育たない」と考えています。
それは以下のような結果責任を負うプレッシャーを乗り越えるからです。
- 自分がブランド・会社の浮沈を背負っているプレッシャー
- 部門間の利害・人間関係の衝突の間に立つプレッシャー
- 無茶な期日でも仕事を果たさなければならない時間のプレッシャー
- 自身のキャリアが叶うか損なわれるかの瀬戸際のプレッシャー
修羅場を潜り抜け、腹の中に意思決定の「ガッツメーター(自分特有の判断基準)」が出来上がっていきます。
第8章 マーケターに向いている人、いない人
マーケターに向いている人の特徴が4つ挙げられています。
- リーダーシップの強い人
- 考える力(戦略的思考の素質)が強い人
- EQの高い人
- 精神的にタフな人
この中でも特にリーダーシップ適性に優れることが最も大切だと説明されています。
英語力・数学力・マーケティング知識は全くもってマーケティングを志す時点では重要ではありません。
逆に上記の4つの特徴のいずれも該当しない人はマーケターになることはオススメできません。
第9章 キャリアはどうやって作るのか?
情熱を傾けて頑張り続けるために、「好きな仕事」でなければ成功するのは難しいです。
そのため、会社ではなく「職能(スキル)」を選び、会社のとgive&takeは長い目で見て成立していれば良いです。
日本人の多くは弱点克服に比重を置き過ぎた「ドM気質」であるが、自分の強みを把握してそれを圧倒的な強みになるように伸ばしていくことが大事です。
自分の強み探しにおいて大事なのは、他人との比較ではなく、自分の中の相対的な好き嫌い、得意不得意かの比較の中から導き出します。
value(価値観)→mindset(心構え)→skill(技術)→behavior(行動)
の順番で人に影響を与えるので、自分の行動を変えたい時は価値観から順番に変えていかねばなりません。
『『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』を読んで今後勉強すべきこと
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』を読むことで、マーケティングの基礎について理解することができました。
さらにユーザーのニーズを把握するために、古典的名著『ドリルを売るには穴を売れ』を読んでみました。
農業にもマーケティングを持ち込むことで、農産物を付加価値をつけて売ることができるようになると思います。
マーケティングをさらに勉強するために、『農業のマーケティングの教科書』を読んでみます。
まとめ
『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』を書評・要約のようにまとまっていないかも知れませんが、感想・内容を紹介しました。
まだまだ勉強不足ですので、これらからもしっかり勉強していきます。
WEBマーケティング&
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