三重県四日市市は、海軍燃料基地跡地にできた石油化学コンビナートによって、発展してきた町です。
コンビナートの運用を下支えするため、創意工夫を凝らした技術が残っており、特に貴重な構造物として「末広橋梁」を挙げられます。
近代化遺産建造物として国の重要文化財に指定され、さらに機械遺産に登録され、丁寧に保全されている貴重な橋です。
現地を訪問してきましたので、構造物の情報・現地の情報をまとめてみます。
末広橋梁について
「末広橋梁」は、1931年(昭和6年)に完成した三重県四日市市千歳運河に架かる、現存唯一の跳開式鉄道可動橋です。
JR貨物四日市港線の橋梁として現役で稼働しており、通常時は船舶が航行できるように鉄塔頂部からワイヤで巻き取って約80度の角度で跳上状態にし、列車通過時のみ可動桁が降ろされます。
1日に数往復(現在5~10往復前後)の列車が運行され、開閉の様子を実際に見ることができます。
この構造物から、鉄道による陸上輸送と船による水上輸送のいずれも重要であった四日市市の状況が伺えるのではないでしょうか。
可動橋を専門とする棟梁技術者「山本卯太郎」の代表作であり、この鋼索型跳上橋のことを山本式鋼索型自動平衡跳上橋・山本式跳上橋とも呼ばれます。
末広橋梁の詳細な諸元は以下の通りです。
末広橋梁の詳細な諸元 | |
構造形式 | □鋼鉄製上路式・下路式プレートガーダー橋 □5連桁(1連コンクリート桁・4連鉄桁) |
橋長 | 57.98m |
幅員 | 4.1m |
主塔 | 15.6m |
跳開部桁長 | 17.6m |
跳開部重量 | 48t |
釣合おもり | 24t |
国の重要文化財
重要文化財は、有形文化財の中で重要なものとして文化財保護法に則って国が指定したものです。
建造物と美術工芸品の2つの大別され、さらに建造物は以下の14項目に細分化されています。
- 近世以前/神社
- 近世以前/寺院
- 近世以前/城郭
- 近世以前/住宅
- 近世以前/民家
- 近世以前/その他
- 近代/宗教
- 近代/学校
- 近代/官公庁舎
- 近代/産業・交通・土木
- 近代/住居
- 近代/文化施設
- 近代/商業・業務
- 近代/その他
末広橋梁は、1998年(平成10年)に近代化遺産建造物として、「近代/産業・交通・土木」に分類される国の重要文化財に指定されました。
近代化遺産とは、幕末から第二次世界大戦期までの間に近代的手法によって建設され、国の近代化に貢献した産業・交通・土木に関する遺産のことです。
機械遺産とは
「機械遺産」とは、歴史に残る機械技術関連遺産を大切に保存して次世代に伝えることを目的として、日本機械学会が認定した機械技術に関わる歴史的遺産です。
機械技術の「発展史上」工学的な視点から重要な成果を示すもの・「国民生活、文化、経済、社会、技術教育」に対して貢献したものから、次の各項目のいずれかに該当するものが認定されます。
【機械遺産認定基準】
- 対象物が、その独自性(例えば、はじめて開発されたもの、最初のもの、現存最古のもの、以前に広く使われた機械で使用されている最後のもの)によって区別されるもの。
- その他、機械技術史上の特徴を保有しているもの。
- 既に博物館などで記念物として認定されたものも含む。
末広橋梁は、2015年(平成27年)に日本機械学会の機械遺産第70号に認定されています。
毎年新しい機械遺産が増えていきますので、日本機械学会のHPを閲覧し、最新の情報をご確認ください。(日本機械遺産HP)
末広橋梁へのアクセス
- 所在地:〒510-0001 三重県四日市市末広町5
- 公共交通機関:JR東海「四日市駅」から徒歩約15分、三重交通バス「末広町北バス停」から徒歩約5分
・タクシー:タクシーアプリ「GO」
・レンタカー:skyticketレンタカー
- 自動車:伊勢湾岸道「みえ川越IC」から車で約20分
- 問い合わせ:三重県四日市市シティプロモーション部文化課 Tel:059-354-8238
駐車場
駐車場として整備されているところはありませんが、駐車できるスペースは広くあります。
工業地帯ですので、トラック等が多く行き交う場所ですので、周囲の交通の妨げにならないようにしましょう。
まとめ
近代化遺産建造物として国の重要文化財に指定され、さらに機械遺産に登録されている「末広橋梁」をまとめました。
跳ね上がる可動橋の迫力ある動きと、昭和初期に築造された橋梁技術を今も体感できる末広橋梁は、近代化産業遺産巡りや撮り鉄ファンにも人気のスポットです。
現役で稼働している最後の鉄道可動橋ですが、いつ故障したり取り壊しになるかわかりません。
興味がありましたら、できるだけ早く訪れて実際に開閉シーンをみてください。