ため池は全国に約21万か所あり、そのうち滋賀県には1474箇所の溜池が存在していることが分かっています(滋賀県農業用ため池データベース)。
その1474箇所のうち4つがため池百選に選定されています。
- 八楽溜
- 西池
- 三島池
- 淡海湖
その中の1つである「八楽溜」を実際に鑑賞してきましたので、紹介します。
ため池百選とは

ため池百選とは、農林水産省が全国に約21万か所あるため池から、生活への役割・保全の必要性を広く認知してもらうために選定したため池100箇所のことです。
選定対象は以下の3条件です。
- 現に農業用の水源としてため池の貯留水が利用され、継続的に農業が営まれているもの
・ため池とは、かんがいのために水を貯え取水できるよう人工的に造成された池のこと ・いわゆる「ダム」と呼ばれているものは対象外とするが、地域で農業用ため池と認識されているものは対象 ・自然の湖沼、過去は農業用に供されていたが現在は農業に利用されていないものは対象外 - 堤体等の適切な維持管理がなされているもの
- 以下の5つの視点のうち1つ以上において特に秀でた特徴を有しているもの
1)農業の礎
2)歴史・文化・伝統
3)景観
4)生物多様性
5)地域とのかかわり
参照:ため池百選 農林水産省
「八楽溜」について


「八楽溜(はちらくだめ)」は、滋賀県東近江市大沢町にある約2.5haのため池で、農林水産省の「ため池百選」・滋賀県の「滋賀のため池50選」にも選定されているため池です。
八楽溜のある大沢地区は周辺の村から農業用水の供給を受けられなかったため、帰農した武士たちが彦根藩主井伊直孝に請願し、1616年(元和2年)に築造されました。
1980年(昭和55年)に排水施設、1994年(平成6年)には堰堤の補強が行われ、現在は16haの灌漑を行っています。
灌漑以外にも周辺集落の防火用水としての役割もあるようです。


親水公園としても整備されており、池の中央には弁天島があり、堤は桜が植樹されています。
「八楽夏まつり」「八楽溜水上運動会」が行われ、地域から慕われている場所です。

ため池ならではの良好な湿地帯も残されています。
そのため、葦・ガマなどの植物、シラサギ・カイツブリ・マガモなどの鳥類をはじめ、多数の魚類など合計106種の生物が確認されています。
八楽溜で実施される「総つかみ・オオギ漁」について
引用:大澤いきいき委員会
「総つかみ・オオギ漁」は、池の底に溜まった泥を巻き上げて流す「泥さらえ」とともに魚つかみを行う伝統漁法です。
池底の泥を攪拌して流す効果もある「泥さらえ」は、ため池の機能保全に役立ちます。
また、魚をとるだけのイベントではなく、「地域の交流の場」「ハレの場」として機能していました。
江戸時代から4年に1度行われて昭和37年まで続けられていましたが、いったん廃止され、平成10年に地元の「郷づくり活動」の一環として復活しました。
総つかみとは
引用:大澤いきいき委員会
八楽溜は、惣溜(惣とは、村以前の集落の単位)として村全体で管理してきました。
惣溜である八楽溜の底に溜まった泥を、大勢の人が歩き回って水と一緒に流し出す「泥さらえ」を、「惣つかみ」として4年に1度行われていました。
惣つかみを行わない3年間は、養魚池としての権利を落札で決め、その権利料を大沢の財源に充てていました。
この「惣」が「総」になって、「総つかみ」と表されるようになりました。
オオギ漁
「オオギ」とは大カゴで竹製の漁具で、足元に魚の気配を感じたら上から被せて穴から魚を獲るように使います。
総つかみでとる魚は大切な食材だったので、オオギを使うのは1軒に1つと決められていて、公平に魚を分配していました。
今でもタイ・カンボジアなどではこれによく似た漁具が使われています。
日本国内では、八日市の芝原町に残っているほか、鳥取市気高町でも同じ漁具が使われていますが、「うぐい突き」と呼ばれています。
「八楽溜」へのアクセス
- 所在地:〒527-0114 滋賀県東近江市大沢町
- 公共交通:百済寺バス停から徒歩約30分
- 自動車:名神高速道路「八日市IC」から車で約10分
・タクシー:タクシーアプリ「GO」
・レンタカー:skyticketレンタカー
駐車場について

2〜3台の車が停められそうな駐車場があります。
八楽溜の周囲にありますが、道路が狭いので駐車場まで気をつけていきましょう。
まとめ

滋賀県東近江市にあるため池百選に選定されている「八楽溜」を紹介しました。
八楽溜は、その歴史的背景や地域文化、生物多様性など、多面的な価値を持つため池です。
灌漑、防火用水として現在も利用される一方で、親水公園として整備され、多くの人々に愛されています。
滋賀県には「八楽溜」以外にも、
- 西池
- 三島池
- 淡海湖
の3つがため池百選に選定されているので、ぜひ鑑賞しに行ってみてください。